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畳のリフォーム・新調工事では「畳表(たたみおもて)」に注目が集まりがちですが、実は畳の使い心地・耐久性・断熱性・施工性を左右するのは『畳床(たたみどこ)』の選定です。
今回は、畳の施工に携わるリフォーム業者の皆様に向けて、各種畳床の特徴・メリット・注意点をまとめてご紹介します。施工現場・施主のニーズに合った最適な畳床選びの参考にしてください。
特徴
伝統的な畳床。圧縮した稲藁を何層にも重ね、縫製して作られています。高級和室や茶室などに適しており、自然素材の調湿機能に優れます。
・稲わらが湿気を吸収・放出し、室内の湿度を自然に調整
・梅雨時のジメジメ感を軽減、冬場の乾燥対策にも有効
・藁と藁の間の空気層が断熱材の役割
・フローリングに比べて冬場も足元が暖かい
・素材は稲わらのみ。シックハウス対策にも◎
・アレルギーや小さなお子さまにも配慮
・足への負担を軽減し、長時間座っても疲れにくい
・万が一転んだ場合も衝撃をやわらげ、ケガをしにくい
・畳本来の香りでリラックス効果も期待
・高級和室や茶室などにも使用される格式ある素材
・藁床は湿気を吸収しやすいため、換気が不十分な環境ではカビやダニが発生しやすい
・特に梅雨時や湿度の高い地域では注意が必要
・現代の住宅は気密性が高く、昔の家に比べて空気の循環が悪い傾向にある
・そのため、藁床が吸った水分を放出しきれず、内部に湿気がたまるリスクがある
・カビ・ダニを防ぐためには、定期的な換気や除湿器の使用などの対策が重要
・畳の裏返しや表替えなど、定期的なメンテナンスも求められる
特徴
ポリスチレンフォームやボード芯材を藁でサンドした構造。藁床の感触を保ちつつ、施工の負担軽減・ダニ対策も意識されています。
・伝統的な藁床に近い感触を持ちつつ、軽量化されている
・藁の使用量が少なく抑えられているため、藁床よりも価格が安価
・防カビ・防ダニ性に優れる
・芯材にポリスチレンフォームやエコボードを使用
・湿気がこもりにくく、カビやダニの発生を抑制
・ポリスチレンフォームの効果で、床冷えを防ぎ、快適な室内環境を保ちやすい
・湿気対策にも効果的
・構造上、畳全体が湿気で覆われることを防ぎ、畳の劣化やダニの繁殖を抑える
・一部の製品では、芯材に使用されるボードによりダニやチャタテムシが発生しやすくなる場合がある
・ポリスチレンフォームに比べて、防虫性がやや劣る点に注意
・以前はポリスチレンフォーム(断熱性・防虫性に優れ、非有害)が主流だった
・現在は環境への配慮からリサイクル可能なボードへ移行が進んでいる
・ボードの使用で、破棄時の環境負荷は軽減されるが、衛生面では注意が必要
・ボード製の藁サンド床を採用する場合、こまめな換気や除湿対策でカビや虫の繁殖を予防する必要がある
特徴
ポリスチレンフォームを使わず、インシュレーションボード(畳ボード)のみで構成。環境配慮や高耐久性を求める施設に最適です。
・吸湿性が低いため、湿気がこもりにくく、ダニの発生リスクが低い
・高温多湿な環境でも安心
・長期使用に適しており、へたりにくく型崩れしにくい
・リサイクル素材としての側面もあり、環境にやさしい建材床
・藁床や藁サンド床と比べて、素材コストが高め
・導入時の初期費用がやや上がる傾向にある
・インシュレーションボードの耐久性は高いが、部分補修が難しい素材
・一部が破損した場合でも、全体交換が必要になることもある
・防湿性・耐久性を重視するユーザーに向いている
・賃貸住宅よりも、永く使う戸建てや施設用途におすすめ
特徴
ポリスチレンフォームを最下層に配置し、ボードで挟んだ構造。コンクリート床に直敷きできる仕様で、マンションや集合住宅リフォームに対応。
・大量生産が可能なため、藁床よりも安価
・集合住宅や賃貸物件などで採用されやすい
・芯材にポリスチレンフォームを使用しており、冷えにくく快適な室温を保ちやすい
・冬場の底冷え対策にも効果的
・吸湿性が低いため、ダニやカビの発生を抑制しやすい
・清潔さを重視する住宅にも適している
・非常に軽く、畳上げや施工時の取り扱いが楽
・床板への負担も少なく、施工業者にとっても扱いやすい
・作業効率が高いため、工期の短縮やコスト削減につながる
・マンション・アパートなどの現場で広く活用
・主にコスト優先の賃貸住宅などでの使用が多い
・ポリスチレンフォームは通気性が低く、湿気がこもりやすい
・カビや結露を防ぐためには換気や除湿対策が必要
・張り替えや補修の自由度が低く、一部損傷時の対応がしづらい
特徴
ポリスチレンフォームを中心に、上下をボードで挟んだ構造。価格・軽さ・施工性が魅力。
・芯材にポリスチレンフォームを挟み込んでおり、冬場でも床冷えしにくい構造
・快適な室内環境を維持しやすい
・コストが抑えられており、賃貸住宅や集合住宅向けに導入しやすい
・生産ラインへの適応性が高く、安定した供給が可能
・基本的に素材の特性上、へたりやすく劣化が早い
・傷や破損が生じた場合、修理が難しく交換が必要となることが多い
・部分補修が困難で、ダメージが大きい場合は畳床全体の交換が必要
・工業製品であるため、リサイクルが難しく環境負荷が高い傾向にある
・環境意識の高いユーザーには不向き
うす床は、全体の厚みが15mm〜20mmほどの薄型仕様の畳床です。主にマンションやリノベーション物件など、床高に制限がある場所やバリアフリー仕様の空間に使用されます。
床暖房との併用を前提に開発された畳床です。発熱体との相性を考慮し、熱が効率よく伝わるよう設計されており、熱による反りや変形、カビの発生を抑える素材で構成されています。専用の畳表や施工条件の事前確認が必要なケースもあります。
種類 | 主素材構造 | 特徴 | 施工性 | 耐久性 | コスト | 提案適性 |
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藁床(わらどこ) | 圧縮乾燥ワラ | 高級感、調湿性、伝統的な和の風合い | × 重い | ◎ 長寿命 | × 高価 | 茶室・高級和室・旅館 |
藁サンド床 | ワラ+断熱フォーム or ボード | ワラの風合い+軽量化・断熱性 | △ 普通 | ◯ 中程度 | ◯ 標準 | 一般住宅・改修リフォーム |
Ⅰ型建材床 | インシュレーションボードのみ | 耐久・環境性能◎、重め | △ 重め | ◎ 高耐久 | × 高価 | 公共施設・高耐久案件 |
Ⅱ型建材床 | 下層:フォーム+上層:ボード | 軽量・防湿構造、コンクリート直敷OK | ◎ 軽量 | ◯ 標準 | ◎ 安価 | マンション・集合住宅リフォーム |
Ⅲ型建材床 | 中心:フォーム+上下:ボード | 最も一般的、軽量・安価・大量施工向き | ◎ 軽量 | ◯ 標準 | ◎ 安価 | マンション・集合住宅リフォーム |
薄床 | 建材床の薄型タイプ | バリアフリー・軽量・低コスト、耐久性低め | ◎ 最軽 | △ やや弱い | ◎ 低コスト | 洋室→和室化、仮設、介護施設 |
畳床は畳の見た目には現れませんが、快適さや耐久性、施工性に大きく影響します。藁床の自然な風合いから、軽量で扱いやすい建材床や薄床まで、それぞれにメリット・デメリットがあります。
リフォーム現場では、お客様のニーズや施工環境をしっかり把握し、最適な畳床を選ぶことが大切。重さや耐久性、施工のしやすさなどバランスを考えながら提案すれば、満足度の高い仕上がりにつながります。
キツタカは畳床の特徴を深く理解し、現場に合わせた柔軟な対応で、リフォーム業者様の力強いパートナーを目指します。
畳床選びでお困りの際は、ぜひご相談ください。